西野カナと阿部真央の歌詞を比較してみる

先日、
『西野カナの歌詞考察(メジャーなのにサブカルに愛される人)』
という記事を書いた。
それに関連して。
今日は阿部真央さんと比較して、ちょっと書いてみる。
参考:阿部真央の歌詞一覧リスト
阿部真央の歌詞
二人の歌詞はとても似ている。
恋愛、片想いの歌詞が多い。
さらに、「西野カナの歌詞考察」でも書いたが、「シンプルな強調表現」も似ている。
で、ボクは思った。
「もう、これ、同じなんじゃないの?」と・・・。
どちらも「メール」や「君」という言葉を多用しているし・・・。
いやしかし、同じはずがない。
実際、阿部真央の歌詞を読んでいると、西野カナのとは、何かが異なる。
うーむ…。
……ん? そうか。
非常に微妙だが、差がある。
阿部真央と西野カナの歌詞の違い
同じ恋文でも「文体」が異なる
まず、阿部真央のこちらの歌詞を見てほしい。
- 一緒に花火を観たいです
あつかましい願いではありますが
貴方の恋人になりたいのです
- 些細な一言に舞い上がり 沈んだりするんです
これらは彼女の代表曲だ。
「ですます調」だ。
ですます調のスクランブル交差点で、「です」と「ます」が接触事故を起こしている。
さらに、“なりたいのです”という強烈な文法。こんな言葉、ボクは今まで使ったことがないよ。今度面接で使ってみるよ。
(・・・と、まぁ、それはよい。ボクの個人的な感想だ。無視してくれ)
一方、こちらは西野カナ。
- 君の言葉ひとつだけで 舞い上がったり落ちたりして 私じゃないみたい
- 『Distance』
さきほど引用した『私は貴女がいいのです』(“些細な一言に舞い上がり 沈んだりするんです”)という歌詞と、言ってる内容ほぼ同じだ。
けれど、西野カナは「ですます調」は使わない。
つまり、同じ内容の恋文でも、
- 阿部真央は、「丁寧な手紙文」
- 西野カナは、「フランクなメール文」
ということだ。
西野カナは、普段つかっている言葉を重視している。
さらに、阿部真央は「僕」という主語をよく使う(西野カナは「私」で一貫している)。
恋愛において「ですます調」や「僕」なんて普段使わないよね?って
良し悪しは別として、
普段つかっている言葉を、無理やり「歌詞っぽく」させるのではなく、
普段つかっている言葉を、歌詞にせずに、「そのまま歌っている」ということだ。とんでもない度胸だ。
さらに、ふたりの微妙な違いは、もうひとつある。
これは決定的だと思った。
そして、意外な事実も発覚する。
“前に出る”我と、“後ろへ下がる”我

「我が強い」といった使われ方をする、『我(が)』のことね。
結論から言おう。
ふたりとも、歌詞の中に、強い自我がある。
しかし、そのふたつは微妙に違う。
- 阿部真央の「我」は、“やや前に出る”我
- 西野カナの「我」は、“やや後ろへ下がる”我
以下、西野カナの歌詞。
- 不器用だけど 今は弱さもみせてほしいから ここにいるよ
どんな暗闇でも ちゃんと隣にいるから 私が隣にいるから
- 『君って』
- 君の描く未来に 私はいるのかな
同じ空を 同じ想いで 見上げていたいよ
- 『if』 - 真夏の恋が凍えてる 君の優しさを知りたくて あと少しだけ側にいさせて
男性の“わき”にいる感じがするよね。
好きな人の「隣」とか「側」という言葉を使っているからだね。
つまり、西野カナの歌詞には、男に対して「謙譲」がある。へりくだりってやつね。
一方、阿部真央は、
もう、歌詞を引用するのもめんどくさくなったし、
というか、このタイトルだけでもうわかるよね…。
西野カナが、“やや後ろに下がる”我なのにたいして、阿部真央は、“やや前に出る”我。
わかりやすくいうなら、
その恋が「叶わない恋」であるとき、
- 「『となり』にいさせてよ(いたいよ)」というのが西野カナ
- 「『正面』をみてよ(みたいよ)」というのが阿部真央
へりくだってるねえ、西野カナ。。。
で、ここから、意外な事実が発覚。
西野カナは女性向けのアーティストではなく、実は男性向け
阿部真央の歌詞は女ウケよく、西野カナは男ウケがいい。
なぜなら、
残念ながら(?)多くの男性は、西野カナのような「謙譲的」な歌詞のほうが好きだからだ。
いわば、「男をたてる」ような歌詞だから。
男性にモテるのは阿部真央よりも、西野カナの歌詞である。
つまり、どういうことになるかっていうと、
西野カナは、実は、「女性向け」のアーティストではなく、「男性向け」である、
ということだ。。。
なんという…、
「女性の共感」が売りであるのに、ともすれば、それ以上に男性にウケてしまう可能性があるという…。
つまり、どっちかっていうと、
西野カナは、「女性のカリスマ」じゃなくて、
男性に支持される「アイドル寄り」なんじゃないかって。
所属会社が、「女性のカリスマ」的な売り出し方をしているだけで、本当は「男向け」なんじゃないか。
・・・ま、という、可能性の話ね。
実際にそうかは別として。
はい、以上です。@ryotaismでした。
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