ワタミがブラック企業大賞に選ばれたので中の人に聞いてみた

ブラック企業大賞企画委員会は8月11日、「ブラック企業大賞2013」の受賞企業を発表した。大賞はワタミフードサービスとなった。
一般投票ってのは、ほとんど「ネット投票」だろう。
ネットで流布されている情報から判断し、投票した者も多くいるだろう。
実際のところはよくわかんないんだけど、いまいち私にはピンとこなくて…。
というのも、ワタミで店長をやっている友達がいて。
『ワタミ』で勤める友達の話
ボクの友達にワタミで店長をやってる者がいる。
彼は後輩なのだが、定期的に遊んだり、音楽CDを貸し借りしたり、仲が良い(と私は思っている)。
先日、ワタミの懇親会か何かで、上京していたので、ウチに泊めてやった。
「なんか、ネットで騒がれてるけど、どうなん?」と聞けば、「え? そうなんですか?」という回答。
「忙しくて、そんな情報を得る暇すらないのだろうな」と、推測。
が、「残業問題」「過労自殺の件」などはさすがに知っていた。
それに関しては、「んー、ちょっとなんともいえないですねぇ……」という感じで、あまり深刻に考えていない模様。
“中の人”なんてのは、意外とそんなものかもしれない。
彼はワタミで働いて7年が経つ。
その間、彼が仕事で苦しんでいるようには別段見えなかった。
給料は20万以上、ボーナスもある。住居手当もある。
自動車も買っていた(休日が少なく、車に乗る機会もなく、結局、売ってしまったようだが…)。
「20連勤とか、よくあること」らしく、それくらいの手当は当然なのかもしれない。むしろ安いのかもしれない。
もちろんウラでは色々大変なことがあるだろう。
話をしてて驚いたのは、
年末の繁忙期、バイトの人手が足りず、「母親を店に招集して、仕事を手伝ってもらった」、とのこと。
「すげぇなおい!」と思ったのだが、それでも彼は、平然としており、大変なようにはみえなかった。
それだけ忙しいのに、彼はあまり愚痴を言わない。
なぜかは後述する。
飲食業界
かくいう私も、社員として飲食業で勤めていた。
“残業が多く、休日は少なく、給料が安い”とは飲食業界でよくいわれること。
店が家状態、家は寝るだけ。
就職したくない業界はどこですか?
この質問に対し、最も多かったのは「フードサービス」で15.9%。
学生の間に飲食のバイトを経験して、朝から晩まで店にいる正社員をみて、「こんなふうにはなりたくないなぁ…」と思うのかもしれない。
“外食小売業への就職は負け組”という極端な意見もある(私は全くそう思わないが)。
朝から晩まで店で動きっぱなしで、肉体的に疲れる。
加えて、接客業であるから神経もすり減る。
また、周りはほぼ学生でああり、「学業と遊び」が仕事のような彼らを、シフト管理するのだけでも一苦労。しかもすぐに辞めていく。
たしかにしんどい業界ではある(どの仕事もだいたいそうだが)。
結局、私は別でやりたいことがあって、その仕事を辞めた。
「別のことに集中する時間」が、まだ若い私には作り出せなかった。
彼の場合
と、そんな飲食業界であるが、私は彼に聞いた。
「休みなく働いて、一体、『やりがい』はなに?」
「店のアルバイトは『若い人』が多いんですよ。そういう若い感性に毎日触れることで、自分も若くいれる気がするんですよね」
休みも少なく、残業が多い。店は家状態である。
が、彼にとっては、なんだかんだ、店が『居心地のいい家』なのだ。
入れ替わりはあるが、店員たちは、「ひとつのチーム」を組んでいる。
一つの目的に向かい、一つのチームとなって、一つの空間を共有する。
“家族”とまではいわない。半年もすればほとんどが辞めるのだから。
が、それはそれで、新しい空気が入って、新鮮な状態を維持する。
色々な人の価値観を学ぶ。得る。ともに店で働くことによって。
また、「若い学生さんたちといっしょに仕事ができる」、
これは飲食業界の特徴でもある。
若々しい感性に毎日触れることができる。
彼はそんな環境にメリットを感じているのだ。
「しんどいっすけど、成長と充実はありますよ」、と。
もちろん、みんながみんな、そうではないだろう。
過酷な労働環境によって、鬱にでもなれば、元も子もない。
彼は例外なのかもしれない。
私が彼の友達であるということもあるのだろうけど、
「ブラック企業大賞」に選ばれたことが、なんだか、よくわからなかった。ピンとこなかった。
***
「ブラック企業」がなんなのか、私にはいまだよくわからないが、 社員を騙すような、あるいは客を騙すような仕組みをもった会社は、芳しくないだろう。
が、たとえそんな会社であっても、「悪いことばかりじゃあないですよ」と、中の人は言う。友達が言う。
洗脳とか、私には判断のしようがないし、どんな報じられ方をされようとも、応援するよりほかない。無論、不買運動なぞしない。