『諦める力』というカッコよさ、『信じる力』というダサさ。
流行っとりますね。
『諦める力』
「諦める」ということを、もう少しプラスに捉えてはどうだ?背徳感をもちすぎじゃないか?って。
どこぞの先生も、努力はベクトル、矛先を間違えば単なる徒労だよって言ってた。
継続だけがすべてじゃないって。
自分の適性を見極め、新しい道を切り開くこと、
前向きに時々諦めていくことも必要だ、断捨離のように。
―――と、そんな感じで、今よりも一歩先に進むために、「諦める力」「捨てる勇気」も必要なんだって。
納得。そう思う。
でも、そんなに簡単に諦められない連中ってのがいる。
これは馬鹿だよ。努力は一人前だが、「そんなやり方じゃ死んでも成功しない」っていう不器用な人がいる。
同じやり方で、不向きな夢を追い続けていると、不幸になる、貧乏になる。
さっさと今のやり方を辞めて、諦めて、別の方向に切り替えたほうがいい。
本当の目的
この前、友達と話してたんだよ。
「年収5千万になるにはどうすればいいか?」って。
仕事ができるそいつはこう言った。
「『年収500万 → 1千万 → 3千万 → 5千万』という流れがあったとして。1千万稼げるようになっても、それは通過点にすぎない。それはあくまで『5千万のための1千万』にすぎない。ビジョン が明確に見えていること。目の前の収入ではない。ゴールだけをみている。ゴールに達する人は、ゴールから“逆算”して、今すべきことを導き出している」
と、そんなことを彼は言ってて。
実際、そうなんだろう。そういう考え方が大事なんだろう。
こういった“成功の法則”からズレている人ってのは、ずっと成功しないままなのかもしれない。
でもちょっと待てよ。
そんな成功の法則にすんなり乗っかるなら、乗っかることができるなら、だれもヒキコモリになんてならねぇよ。俺はならなかったはずだよ。
その友達に言った。
「じゃあ5千万稼いだら、そのあとどうするの?」
「1億です」「じゃあ次は?」「10億です」「じゃあその次は?」「100億です」「じゃあ100億の次は、その次のゴールは何?」「・・・」
彼は黙った。
思った。
彼のそれは成功者の考え方だ。
しかし、彼は哲学者ではない。芸術家ではない。仙人でも覚者でもない。
100億稼いだあとが大事なんだって。そこだけが大事、そこしか見ていない人がいる。
それはなにか?
『死』だ。すべての先にあるもの、それは『死』だ。
『死』こそが、最終にして最大の目的なんだ。
成功者の考え方ではない、が、これが哲学的な考え方だ。
目的は100億じゃない、生活じゃないんだ。
もっと、ずっとその先。
「いかにして生きるか」なんてこっちゃない。
いかにして生きて、じゃあ何があるんだ?何が待ってるんだ?
『いかにして死ぬか』だ。
「いかにして生きるか」なんてのは、行き着くところ、「いかにして死ぬか」なんだよ。
俺はね、最初に戻るけど、俺はね、
どうみても不適正で、どうやっても成功しない、行き着くところ不幸しかない不器用な生き方をしている連中が、『死』に近い生き方をしているように思えるときがある。
彼の目に映る、いちばん最後の目的は、「いかにして死ぬか」じゃないか。
「いかにして成功するか」なんて興味ないんだよ。まったく興味ない。
「どうすれば納得して死ねるのか」、ただそれだけなんだよ。彼にとっては。
「信じる力」
「信じる力」なんて、かっこわるくてダサいものだ。
「諦める」という自主性に比べ、どこか、すがっているようにも思える。
また、「信じて何かを行う」というのが、器用な思考だとは思えない。
だからこそ、「諦める力」「辞める勇気」が求められる。
でも俺は言いたいんだよ。どっちなんだって。
「幸福になりたいのか?不幸になりたいのか?」
さぁどっちだ、どっちだよ、選べ。
「生きたいのか?死にたいのか?」
死にたくはない。
でもそれは、厳密に言えば、
『こういうふうに死にたくはないのであって、こういうふうに死にたい』という気持ちはあるんだよ。
「死にたくない」という気持ちだけを、「生きたい」という気持ちのすべてにしてはいけない。
「信じる」ということは、愚かで不器用なことだけど、
「いかにして死ぬか」という疑問にこたえてくれる、こたえてくれると、俺は思っているんだよ。
だから、簡単に諦められない連中、
馬鹿で、愚かで、不器用で、賢くない、信じる力と無謀な努力に必死な連中、
そんなやつらがうらやましい。
負けても失敗しても不幸でも、そんな「生き方」のほうが、「死に方」として納得できそうなんだよ。
かっこよく、死ねそうなんだよ。納得できそうなんだよ。
終わる瞬間、人生のすべてが終わる瞬間、ゆるやかに、やさしく、微笑みをのせて、終わっていく私自身。
苦しく、不幸であっても、死ぬとき、ただその一点、いちばん最後のゴールから“逆算”して、今すべきことを導き出す。
それを選びたいんよ、そういうゴールを選んでいるんだよ。
スマートに生きてどうする?諦める力?
そんなんじゃ死ねない。
「『信じる力』が『死』に近い、近づけてくれる」と、俺は思っているんだよ。
