年の瀬です。

湯船に浸かりながら、2016年を振り返っておりました。

「今年読んだ本の中で、特におもしろかったのは何だろうなぁ」

思い浮かんだのが三冊ありました。


『エムブリヲ奇譚』(山白朝子)


“山白朝子”、人気作家、乙一さんの別名義。この名義のときは、主に怪談小説を書いています。



“エムブリヲ”とは、出産まで母体に入っている赤ん坊のこと。いわゆる“胎児”のこと。

夜中、外を散歩していると、野良犬が群がって、くちゃくちゃと、何か食っているのを見かけた。

近づいてよく見てみると、小指サイズくらいの、芋虫のような、“白い腹”を食っている。

それは、近くの産院で堕胎された“エムブリヲ”だった。

流産で捨てられたエムブリヲを、拾って育てる――という話なのですが、これがとても印象に残っている。

(ちなみに、インパクトのある文庫本表紙は、東京グールの石田スイさんによるもの。)

山白朝子『死者のための音楽』も読みましたが、これまた良いですよ。続けて読むことをおすすめします。


『クリムゾンの迷宮』(貴志祐介)



貴志祐介さんといえば、映画にもなった『青の炎』『黒い家』などが有名ですが、『クリムゾンの迷宮』もまた代表作です。

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。

ここはどこなんだ?

傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。

「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」

それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。


Amazonレビューなど、ネット上の評判がすこぶる良いので、ためしに読んでみたのですが、これはたしかに、文句なしで、おもしろかった

一晩かけて一気読み。次の日仕事で、寝不足で大変だった…。

イメージとしては『バトルロワイヤル』に近い作品。

普段、小説を読まないという人に、ぜひ。おもしろいですよ。


『蠕動で渉れ、汚泥の川を』(西村賢太)



「確かに自分は<青春の落伍者>にはなりつつあるが、しかしながら、まだ<人生の落伍者>には至っていないのだ」

白衣を着てコック帽をかぶった北町貫多は、はじめての飲食店でのアルバイトにひそかな期待を抱いていた。
日払いから月払いへ、そしてまっとうな生活へと己を変えて、ついでに恋人も……。労働、肉欲、そして文学への思い。

善だの悪だのを超越した貫多17歳の“生きるため”の行状記!

この選別については、単に僕が西村賢太作品のファンであるから、なのですが。。。

発売記念の、トークショー&サイン会にも参加しましたし。


西村さんは短編が多いのですが、本作は『やまいだれの歌』以来の長編作。

いやぁ、笑いました。

“小説を読んで声をだして笑う”、そんなことはありえないと思ってました。西村作品に出会うまでは。

クセが強いので、好き嫌いは別れると思いますが、、、やっぱり僕は西村さんの書く作品が好きだなぁとあらためて思いました。


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以上、2016年を振り返ってみました。

よいお年を。来年もよろしくお願いいたします!@ryotaism