映画『何者』が傑作だったから紹介したい。
いや、これ、本当によかった。おすすめです。
映画『何者』。
原作は、『桐島、部活やめるってよ』などで有名な、朝井リョウさん。
公開日は昨年、2016年10月。
タイミング的に、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』に隠れてしまって、そこまで話題にならなかった、けれど、佐藤健、有村架純、菅田将暉……といった、いわゆる大物俳優女優が出演しており、本来ならば、もっと話題になっていたはず。――そう思わずにはいられないほど、「こいつは傑作じゃないか」と思いました。
すいませんが、原作の小説は読んでいないのですが――映画『何者』がどういう話かというと、これは端的にいえば、
『就職活動とTwitterを通して、現代の若者像を観る』、
そんな作品。
ここ数年、“若者”と“絶望”という言葉がセットで使われているのを、そんな場面を、よく見かけるようになりました。『何者』も、そのような暗めで悲観的な空気感が、話全体に漂っているのですが、ラストシーンは見事な“希望”で締めくくります。
これは実に見事な“希望”でした。
以下、劇中のセリフ。
「頭のなかにあるうちは、いつだって、なんだって、傑作なんだよな。お前はずっと、その中から出られないんだよ。」
意識高い系であったり、ネット上での万能感……などなど、
「じゃあ、その頭の中にあるものを、現実世界にさらけだしてみろよ。世の中に採点してもらえよ」
いや、わかっちゃいるけど、けっこうそれは勇気がいる、怖いことである。
他者や世の中に未提出、未評価であるうちは、まだそれが0点なのか100点なのか、わからない。その時点ではまだ、傑作である可能性が残されており、また、この状態を維持していれば、否定されなくてすむ。
“頭の中にあるうちは傑作”――そこから抜け出さない。というか、怖くて抜け出せない。
ずっと自分を肯定していたい。だから、頭の中に留めておく。
現実に否定されたくない。だから、頭の中に収めておく。
……
……とまぁ、そういう、いろいろなことを考えさせるツライ映画でした。
世の中に採点してもらうことを恐れない。もしも、提出し、それが10点や20点という結果であったとしても、どうやら現代の若者が感じる希望は、そういう危険地帯にあるんじゃないか、そんなふうに思った。
ちなみに『何者』だけでなく、映画『桐島、部活やめるってよ』も名作ですんで、順番はどちらからでもいいですが、両方おすすめです。以上、@ryotaism
